Friday, July 2, 2010
内田樹
死者を「侵略者」として鞭打つために呼び出すものも、死者を「英霊」として顕彰するために呼び出すものも、死者の「顔」を見ようとしない点では、つまり「本当の戦争の話」を語らないという点では、同じ身振りを繰り返している。
この閉じられた言説空間からの脱出に向けて歩み出すことは可能だろうか。おそらく可能であると私たちは信じる。それは「裁き」と「赦し」を同時に果たしうる「物語」の力にもう一度だけ掛け金を置くことである。困難ではあるけれど、さしあたり私たちが最初の歩みを踏み出す道はそれしかない。
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