Flynt Leverett

中東における各国の力関係が今、急速に変化してきていると私は見ています。その中でアメリカの影響力は後退しアメリカは同盟国も失いつつあるのです。中東におけるアメリカの地位が低下しているとも言えます。一方でイランやイランに支援されている国や組織の影響力がいろいろな面で大きくなっているのです。

これは今後の中東を占ううえで非常に象徴的な出来事です。アラブ諸国の政府が国民の声を代弁するものに変わっていくとしたらアメリカは、こうした事態を受け入れなければなりません。新しいエジプト政府が国民の声を聞けばイスラエルによるパレスチナ・ガザ地区の封鎖を支援しなくなるでしょう。またイランの船が、スエズ運河を利用することも認めるでしょう。私はアラブ世界に生まれる新たな政権が必ずしもアメリカの敵になるとは思いませんがこれまでのようにアメリカはアラブ諸国に期待することはできなくなると考えています。各国の政府や国民に対してアメリカとの協力関係が利益になると説得しなければならなくなるのです。

これまでアメリカが行ってきた中東政策に対して中東の住民の多くは嫌悪感を持っています。これは紛れもない事実です。パレスチナ問題やイラク戦争テロとの戦いなど一連の政策が中東の人々に嫌悪感を与えてきました。さらにアメリカが同盟関係を結んできた国々は中東でも国民の支持を集めていない政権ばかりだったのです。世論調査をしてみれば一目瞭然です。中東で国民の支持が高い指導者は例えばイランのアフマディネジャド大統領のような人々です。今後、中東の民主化が進みエジプトやバーレーンあるいはそのほかの国々にも国民の声をもっと反映するような新たな政府が生まれたとします。その場合、その政府はこれまでとは違ってアメリカとの戦略的協力を積極的には進めなくなると思います。

イスラエルとアメリカを除けば世界のすべての国が、このような入植地を違法と考えています。アメリカはイスラエルの安全保障とイスラエルによる占領は全く別問題であるという線引きをはっきりさせるよう方針の転換を迫られているのです。アメリカが十分に機能してこなかったこれまでの中東政策にこだわり政策の見直しを行わなければアメリカが中東地域から締め出されるという悪夢のシナリオが現実味を帯びてくるでしょう。もちろん現時点でそこまで行く可能性は薄いですし中東における地位を安定させるためにアメリカができることはたくさんあります。しかし、それを実行しようとした場合アメリカの国内で理解を得ることは非常に難しいことだと思います。