Wednesday, July 7, 2010

井上ひさし

この宇宙には4千億もの太陽が、星があると申します。それぞれの星が、平均10個の惑星を引き連れているとすると、惑星の数は約4兆。その4兆の惑星のなかに、この地球のように、ほどのよい気温と、豊かな水に恵まれた惑星はいくつあるでしょう。たぶん、いくつもないでしょう。だからこの宇宙に地球のような水惑星があること自体が奇跡なのです‥‥‥。
水惑星といって、かならず生命が発生するとは限りません。しかし地球にあるとき小さな生命が誕生しました。これも奇跡です。その小さな生命が、数かぎりない試練を経て人間にまで至ったのも、奇跡の連続です。そして、その人間の中に、あなたがいるというのも奇跡です。こうして何億何兆もの奇跡が積み重なった結果、あなたも、わたしも、今、ここにこうしているのです。わたしたちがいる、今生きているというだけで、もうそれは奇跡の中の奇跡なのです。こうして話をしたり、誰かと恋だの喧嘩だのをすること、それもそのひとつひとつが奇跡なのです。人間は奇跡そのもの。人間の一挙手一投足も奇跡そのもの。だから人間は生きなければなりません。

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