神戸市立博物館とサントリー美術館が分蔵する「泰西王侯騎馬図屏風」。一見すると西洋絵画に見紛うような表現ながら、油彩ではなく墨や岩絵具といった日本画の材料を用いて描かれている不思議な魅力の絵画です。もとは福島・会津城の障壁画であったと伝えられていますが、戊辰戦争による開城の後に行方が二手に分かれて、両館が所有するに至りました。図柄は西洋の王、計8名が騎馬に乗った勇壮なもの。戦国の世で武家の心を掴んだと思われますが、誰が何のために描いたのかなど、詳しいことは分かっていません。調査の結果、金地の下から「金」という指示書きの文字が見つかったほか、神戸市立博物館本とサントリー美術館本とでは金箔の厚さや純度に違いが見つかるなど、様々な新事実も判明しています。
16世紀半ばから17世紀初頭にかけて、ポルトガルやスペインからいわゆる南蛮船が来航し、西欧の地や、中継の港で荷積みされた貴重な文物を日本にもたらします。また南蛮船に乗船した宣教師がキリスト教を日本に伝え、いわゆる南蛮美術や文化が花開きました。南蛮美術の中でも重要文化財「泰西王侯騎馬図屏風」は、桃山時代から江戸時代初期の初期洋風画の傑作として世に知られています。神戸市立博物館とサントリー美術館が分蔵するこの屏風は、もとは福島・会津城の障壁画であったと伝えられてきました。描いたのは、イエズス会の神学校であるセミナリオにおいてキリスト教とともに西洋画法を学んだ日本人の絵師と推定されています。その画面描写には、当時の西欧の画家たちが身につけていた遠近法や陰影法を、積極的に学んだ跡が見受けられます。しかし、この屏風の制作の経緯については、今もなお、大いなる謎が残されているといってよいでしょう。今回はこの「泰西王侯騎馬図屏風」に関して、東京文化財研究所の特別協力により、画面の光学調査を実施し、その調査結果も展覧会でご覧いただきます。また同時代の南蛮漆器、南蛮屏風などの南蛮美術も一堂に集め展示します。これらの南蛮美術は、西洋と東洋の出会いが生み出した稀有な作品群と言えるでしょう。これらを深く鑑賞することにより、キリシタンや南蛮人をとりまく日本近世初期の歴史の光と影を実感していただければ幸いです。
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/11vol05/index.htmlhttp://cardiac.exblog.jp/17020961/
神戸市立博物館とサントリー美術館が分蔵する「泰西王侯騎馬図屏風」。一見すると西洋絵画に見紛うような表現ながら、油彩ではなく墨や岩絵具といった日本画の材料を用いて描かれている不思議な魅力の絵画です。もとは福島・会津城の障壁画であったと伝えられていますが、戊辰戦争による開城の後に行方が二手に分かれて、両館が所有するに至りました。
ReplyDelete図柄は西洋の王、計8名が騎馬に乗った勇壮なもの。戦国の世で武家の心を掴んだと思われますが、誰が何のために描いたのかなど、詳しいことは分かっていません。
調査の結果、金地の下から「金」という指示書きの文字が見つかったほか、神戸市立博物館本とサントリー美術館本とでは金箔の厚さや純度に違いが見つかるなど、様々な新事実も判明しています。
16世紀半ばから17世紀初頭にかけて、ポルトガルやスペインからいわゆる南蛮船が来航し、西欧の地や、中継の港で荷積みされた貴重な文物を日本にもたらします。また南蛮船に乗船した宣教師がキリスト教を日本に伝え、いわゆる南蛮美術や文化が花開きました。
ReplyDelete南蛮美術の中でも重要文化財「泰西王侯騎馬図屏風」は、桃山時代から江戸時代初期の初期洋風画の傑作として世に知られています。神戸市立博物館とサントリー美術館が分蔵するこの屏風は、もとは福島・会津城の障壁画であったと伝えられてきました。描いたのは、イエズス会の神学校であるセミナリオにおいてキリスト教とともに西洋画法を学んだ日本人の絵師と推定されています。その画面描写には、当時の西欧の画家たちが身につけていた遠近法や陰影法を、積極的に学んだ跡が見受けられます。しかし、この屏風の制作の経緯については、今もなお、大いなる謎が残されているといってよいでしょう。
今回はこの「泰西王侯騎馬図屏風」に関して、東京文化財研究所の特別協力により、画面の光学調査を実施し、その調査結果も展覧会でご覧いただきます。また同時代の南蛮漆器、南蛮屏風などの南蛮美術も一堂に集め展示します。これらの南蛮美術は、西洋と東洋の出会いが生み出した稀有な作品群と言えるでしょう。これらを深く鑑賞することにより、キリシタンや南蛮人をとりまく日本近世初期の歴史の光と影を実感していただければ幸いです。
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