- 人権は,人であるが故に全ての人に属するという点で,固有なものである。
- 人権は,人々がそれを放棄することには同意できず,政府であっても他の機関であってもそれを人々から剝奪することはできないという点で,絶対的なものである。
- 人権は,地位にかかわらず全ての人に適用されるという点で,普遍的なものである。
- 人権は,選択的に無視することができないという点で,不可分なものである。
- 人権は,一つの人権を実現することが他の人権の実現に貢献するという点で,相互依存的なものである。
- 組織統治
- 人権
- 労働慣行
- 環境
- 公正な事業慣行
- 消費者課題
- コミュニティへの参画及びコミュニティの発展
日本工業規格
ReplyDeleteJIS Z 26000:2012 (ISO 26000:2012)
社会的責任に関する手引
Guidance on social responsibility
この規格は,2010 年に第 1 版として発行された ISO 26000 を基に,技術的内容及び構成を変更することなく作成した日本工業規格である。
http://kikakurui.com/z26/Z26000-2012-01.html
4 社会的責任の原則
4.8 人権の尊重
原則:組織は,人権を尊重し,その重要性及び普遍性の両方を認識すべきである。
組織は,次の事項を行うべきである。
− 国際人権章典に規定されている権利を尊重し,可能な場合は,促進する。
− あらゆる国,文化及び状況において不可分に適用されるこれらの権利の普遍性を尊重する。
− 人権が保護されていない状況では,人権を尊重するための措置をとり,このような状況を悪用しない。
− 法又はその施行によって人権が適切に保護されていない状況では,国際行動規範の尊重の原則を守る。
6.3 人権
6.3.1 人権の概要
6.3.1.1 組織と人権
人権とは,全ての人に与えられた基本的権利である。人権には,大きく分けて二つの種類がある。一つ目は市民的及び政治的権利に関するもので,自由及び生存の権利,法の下の平等,表現の自由などの権利が含まれる。二つ目は経済的,社会的及び文化的権利に関するもので,労働権,食糧権,到達可能な最高水準の健康に対する権利,教育を受ける権利,社会保障を受ける権利などが含まれる。
多様な道徳的,法的及び知的規範は,人権が法又は文化的伝統を超越するという前提に基づいている。人権の優位性は,国際社会によって国際人権章典及び主要な人権関連文書において強調されてきた。更に広く考えれば,組織は,権利及び自由を完全に実現できる社会的及び国際的秩序から便益を得るだろう。
人権法の大半は国家と個人との関係に関連しているが,非国家組織も個人の人権に影響を及ぼす可能性があることから,人権を尊重する責任があるというのが一般的な認識である。
6.3.1.2 人権と社会的責任
人権を認識し,これを尊重することは,法の支配,並びに社会的な正義及び公正の概念に不可欠であり,司法制度のような社会の最も基本的な制度の基礎となるものと広くみなされている。国家には,人権を尊重し,保護し,満たす義務及び責任がある。また,組織は,自らの影響力の範囲内を含む,人権を尊重する責任を負う。
6.3.2 原則及び考慮点
6.3.2.1 原則
人権とは,固有の権利で奪うことはできず,普遍的,不可分で,かつ相互依存的なものである。
− 人権は,人であるが故に全ての人に属するという点で,固有なものである。
− 人権は,人々がそれを放棄することには同意できず,政府であっても他の機関であってもそれを人々から剝奪することはできないという点で,絶対的なものである。
− 人権は,地位にかかわらず全ての人に適用されるという点で,普遍的なものである。
− 人権は,選択的に無視することができないという点で,不可分なものである。
− 人権は,一つの人権を実現することが他の人権の実現に貢献するという点で,相互依存的なものである。
6.3.2.2 考慮点
国家は,人権侵害に対して個人及びグループを保護し,その管轄内で人権を尊重し実現させる義務を負っている。最近では,自らの管轄に拠点を置く組織に対し,その管轄外で活動する場合であっても人権を尊重するよう奨励する措置を講じる国家が増えている。組織及び個人は,直接的及び間接的に人権に影響を及ぼす可能性があり,また,実際に影響を及ぼしているということは広く認識されている。国家が人権保護の義務を実現できない,又は実現するのを欲しないということにかかわらず,組織には全ての人権を尊重する責任がある。そもそも,人権を尊重するということは,他者の権利を侵害しないということである。このような責任においては,組織は,人権侵害を受動的に容認したり,積極的に関与するのを回避することを確実にするための積極的な措置を講じる必要がある。人権尊重の責任を果たすには,デューディリジェンスが必要である。国家が人権保護の責務を果たせない場合には,組織は,人権を尊重するというその責任を確実に果たすために特に気を配るべきである。人権のデューディリジェンスが,通常の事業活動に不可欠なこと以上の行動の必要性を指摘するかもしれない。
刑事法の基本的規範の中には,国際的人権の深刻な侵害については国家だけでなく個人及び組織に対しても法的な説明責任を課すものがある。拷問,人道に対する犯罪,奴隷制度,集団虐殺の禁止などである。国際的に認識された犯罪を理由に,組織が国内の法律に基づく起訴の対象となっている国もある。人権関連文書には,人権並びにその実施及び施行方法に関して組織の法的義務の範囲を定めているものもある。
非国家組織の基本的な責任は,人権を尊重することである。だが,組織が人権を尊重する以上の行動を
とったり,人権の実現に貢献してもよいのではないか,と期待するステークホルダーもいるかもしれない。影響力の範囲という概念は,組織が,様々な権利保有者の中で人権を支援するための機会の範囲を把握するのに役立つ。つまりこの概念は,組織が,他者に影響力を及ぼし,これに働きかける自らの能力,自らが最も影響を及ぼす可能性のある人権問題,及び当該権利保有者を分析するのに役立つかもしれない。
組織が人権を支援する機会は,自らの業務及び従業員の中で最大となることが多いだろう。また,組織は,その供給者,同業者,その他の組織及びより広範な社会と協力する機会をもっているだろう。場合によっては,組織が他の組織及び個人と協力することでその影響力を強化したいと望むこともあるだろう。行動し,影響力を強化する機会の評価は,その組織に固有の状況,その組織が活動する環境に固有の状況など,各々の状況によって異なる。しかし,組織は,他の組織に影響力を及ぼそうとするときにマイナスの結果又は意図しない結果が生じる可能性を常に考慮すべきである。
権利保有者及びこれらに影響を及ぼす可能性のある人物に対し,人権についての認識を高めるために,組織は,人権教育の促進を検討すべきである。
ボックス 6 − 国際人権章典及び主要な人権関連文書
世界人権宣言(世界宣言)は,1948 年に国連総会で採択され,最も広く認識されている人権関連文書である。これは人権法の基礎となっており,その要素は,全ての国家,個人及び組織に対して拘束力をもつ国際慣習法を表している。世界宣言では,社会の全ての個人及び組織が人権の確保に貢献することを要求している。市民的及び政治的権利に関する国際規約,並びに経済的・社会的及び文化的権利に関する国際規約は,各国による批准のために 1966 年に国連総会で採択された条約で,1976 年に発効した。国際人権章典は,世界人権宣言,市民的及び政治的権利に関する国際規約,経済的・社会的及び文化的権利に関する国際規約,並びにこれらの規約に対する選択議定書(このうちの一つは死刑廃止を目的としている)で構成されている。
さらに,七つの主要な国際人権の関連文書が国際人権法の一部となり,次について取り上げている。あらゆる形態の人種差別の撤廃,女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃,拷問及び他の残虐な,非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰を防止及び撤廃するための手段,児童の権利,武力紛争における児童の関与,児童の売買,児童買春及び児童ポルノ,移民労働者及びその家族の保護,強制失踪からのすべての人の保護,並びに障害者の権利。これら全ての文書が,普遍的人権の国際基準の基礎となっている。これらの文書は,それを批准した国家に対して拘束力をもつ。一部の文書は,選択議定書に記述された手続規則に従い,個々の苦情の申立てを認めている。