こういふものを二杯以上のむバカはない。その一杯か二杯にしても、立ちながらにぐっとあふったのではなんの変哲もない。焼酎でものんだはうが気がきいてゐるだらう。ただそこに居ごこちのわるくないソファがあって、目のまへに大きいガラス窓があって、窓の外は巷のけしき、巷にはさみだれが霧のやうにふっていたとすれば、ひとりでゆっくりたのしむために、しぜんゆっくりのむことになるが、シャルトルーズの青という酒はぴったりして、今日は知らず、以前はそれが適してゐたやうである。このとき、その場に身を置くと、しゃれにのむという料簡はすでにしゃれといふものですらなく、ほんの一杯か二杯の時間はたちまち止まって永遠にひとしい。
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