失業率は07年当時より3ポイント以上高いうえ、昨年第4四半期はマイナス成長となった。回復基調だが金融危機前には程遠い経済情勢なのに、株価が高値に迫るのはなぜか。
第1の答えは、「QE」と呼ばれる相次ぐ量的緩和だ。FRBが市場から証券などを買い取って大量のドルを供給する効果で、10年物米国債利回りは2%前後と金融危機前の5%弱から大幅に低下している。対して、米企業の利益を株式時価総額で割った指標の「株式益利回り」は7%ある。「国債を買うよりは、多少リスクを取っても株式を買う」という構図だ。
第2の要因は企業決算。昨年第4四半期の実績は過半数企業でウォール街予想を上回った。金融緩和が、消費拡大につながる家計の資産効果を後押ししており、今年下期に企業業績が本格回復に向かうという。金融危機対応として先発登板したFRBの金融政策が降板して、設備投資や消費という民間部門が継投するという「景気回復の主役交代」に期待が生まれているのだ。
ただ、緊縮財政による米景気への影響が懸念された「財政の崖」を回避した安心感から、ウォール街が楽観論に覆われている面もある。3月には政府歳出が強制削減される発動期限や暫定予算の失効が迫っているのに、市場では財政問題が問題視されていない。
「ジャンク」と呼ばれる投資不適格級の高利回り債券市場では、投資熱が冷めてバブルがはじける可能性が指摘されており、債券市場発で米国株が調整局面に入るとの見方もある。
米株高、最高値目前 「奇妙な楽観論」
ReplyDeleteby 松浦肇
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130201/amr13020120340014-n1.htm
米国の株価が金融危機前の2007年につけた史上最高値に接近している。米連邦準備制度理事会(FRB)による思い切った金融緩和の効果が出ているうえ、米国企業の業績回復が見込まれているためで、「官から民」へ、経済の牽引(けんいん)役のバトンタッチが期待されているからだ。ただ、「財政の崖」を乗り切った安心感で「リスク不感症」になった面もあり、目先には不安材料もある。
「今買わないと後々に後悔しますよ」。1月初め、ウォール街に集まった記者を前にドイツ銀行の著名アナリスト、デイビッド・ビアンコ氏は株高を予告した。企業の財務内容や市場心理の改善がその理由だ。
ビアンコ氏は正しかった。米国の代表的な株価指数であるS&P500種株価指数は1月の月間上昇率が前月末比5%となり、年初としては好景気にわいた1997年1月以来の上昇相場となった。S&P指数はあと4%上昇すれば、2007年10月の最高値1565・15(終値)に到達する。
ただ、失業率は07年当時より3ポイント以上高いうえ、昨年第4四半期はマイナス成長となった。回復基調だが金融危機前には程遠い経済情勢なのに、株価が高値に迫るのはなぜか。
第1の答えは、「QE」と呼ばれる相次ぐ量的緩和だ。FRBが市場から証券などを買い取って大量のドルを供給する効果で、10年物米国債利回りは2%前後と金融危機前の5%弱から大幅に低下している。
対して、米データ調査会社S&PキャピタルIQによると、米企業の利益を株式時価総額で割った指標の「株式益利回り」は7%ある。国債と株式の利回りを比べてみれば「国債を買うよりは、多少リスクを取っても株式を買う」(バークレイズ)という構図だ。
第2の要因は企業決算。既に決算発表が本格化しているが、昨年第4四半期の実績は過半数企業でウォール街予想を上回った。金融緩和が、消費拡大につながる家計の資産効果を後押ししており、「今年下期に企業業績が本格回復に向かう」(米金融大手ゴールドマン・サックス)という。 日本でも金融緩和を軸とした安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」が本格始動したが、米国では一足先に量的緩和策を解除する「出口政策」のタイミングが議論され始めた。金融危機対応として先発登板した米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策が降板して、設備投資や消費という民間部門が継投するという「景気回復の主役交代」に期待が生まれているのだ。
ただ、緊縮財政による米景気への影響が懸念された「財政の崖」を回避した安心感から、ウォール街が楽観論に覆われている面もある。3月には政府歳出が強制削減される発動期限や暫定予算の失効が迫っているのに、市場では財政問題が問題視されていない。
「ジャンク」と呼ばれる投資不適格級の高利回り債券市場では、投資熱が冷めてバブルがはじける可能性が指摘されており、債券市場発で米国株が調整局面に入るとの見方もある。