Saturday, July 30, 2011

有年由貴子

関西有数のビーチとして知られる神戸市須磨区の須磨海水浴場。昨夏に違法薬物事件が相次ぎ、今夏から入れ墨(タトゥー)露出や喫煙が市条例で禁止され、市は違反者に注意を重ねる一方、海水浴客から「厳しすぎる」との反発も。さらに「ファッションの小さなタトゥーまで規制するのは人権侵害」と海の家の組合が提訴を辞さない構えをみせる。健全化か自由か-。その答えを求めて浜辺を歩いた。
夏空が広がる休日、多くの利客らでにぎわう中、砂浜に立てられた真新しい看板が目に入った。
《他人に恐怖心を与える行為の禁止!(入れ墨等の露出)》《喫煙の禁止!》《騒音の発生禁止!》…。
看板には改正条例に基づく禁止事項が並んでいるが、立ち止まって見る客はほとんどいない。
浜辺では、肩や腕にワンポイントの花柄などのタトゥーを入れた若い男女の姿が目立つ。市職員や委託された兵庫県警OBらが巡回し、違反者に指導を繰り返していた。
「兄ちゃん、入れ墨は見せたらあかんことになってるねん」
指導を受けるとタトゥーをタオルなどで隠して従う客もいるが、「分かった、分かった」とその場しのぎであしらう客もいる。
胸や足に入れた小さなタトゥーで注意された同市長田区の女性会社員(33)は「ごみの分別などのマナーは守っている。外見で判断しないで」と反発。巡回中の警備員(42)は「いたちごっこだが、何度も声をかけると聞いてくれる人もいる。根気強くやるしかない」と話した。

1 comment:

  1.  ■イベント激減
     「昨年は赤ちゃんが寝付けないほどの音だったが、今年は静かになった」
     近くの主婦(36)は昨年までとは違う雰囲気に胸をなでおろす。昨年までは大音量で音楽を流す“クラブ風海の家”が複数あり、出入りしていた大学生らが相次いで違法薬物の所持などで逮捕され、条例改正のきっかけとなった。
     条例改正に伴って音量が規制されるなどしたため昨シーズンは140件の届け出があったイベントは今年は6件(今月19日現在)にまで激減したという。
     日没近くには、この日唯一、音楽イベントを開いた海の家の前に若者が集まってきた。屋内では若い男女がアルコール飲料を片手にダンスしていた。ただ、音楽イベントは規制のため、市が貸し出した音響設備以外の使用が禁止に。同市中央区の会社員の男性(28)は「やっぱり重低音が響かないと迫力がないね」と不満を漏らした。
     ■「規制は矛盾」
     約10年前にはシーズン中の利用客が100万人を超えていたが、昨年は62万人と過去最低を記録。昨夏の違法薬物事件など、治安悪化で家族連れらが避けているのも減少の要因とみられる。
     「タトゥーを入れた人が多くて怖い」という声や音楽イベントの騒音苦情も相次ぎ、市は健全化対策として「須磨海岸を守り育てる条例」を改正した。
     ただ、タトゥーの露出規制については、ファッション感覚の小さなものまで規制の対象。海水浴場ならではの自由で開放的な雰囲気を喪失しかねないと危機感を抱くのは若者に加え、海の家の組合関係者だ。
     須磨海浜公園売店協同組合の山田博補理事長は「神戸市は国際観光都市として異文化交流を推進しながら、個人の文化として表現するタトゥーを規制するのは矛盾ではないか」と指摘。人権侵害を主張し、提訴を検討しているという。
     「須磨海岸を守り育てる条例」 須磨海水浴場の健全化を確保するため夜間の花火や騒音の規制を盛り込み、平成20年4月に施行した。今年4月の条例改正で入れ墨(タトゥー)の露出や指定場所以外での喫煙などを禁止行為に新たに追加した。条例改正に伴い「海の家」などの規則も強化。営業時間が短縮され、重低音や騒音が出ないように、市が貸与する小型スピーカー以外を使っての音響が禁止された。

    ReplyDelete