Saturday, December 1, 2012

竹中平蔵

私が、若い人に1つだけ言いたいのは、「みなさんには貧しくなる自由がある」ということだ。「何もしたくないなら、何もしなくて大いに結構。その代わりに貧しくなるので、貧しさをエンジョイしたらいい。ただ1つだけ、そのときに頑張って成功した人の足を引っ張るな」と。

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  1. 竹中平蔵(下)「リーダーは若者から生まれる」

    東洋経済 Online

    http://toyokeizai.net/articles/-/11927

    昔の民主主義は、もっと厳しかった

    今の日本には、問題解決のための案を出さず、批判ばかりしている人が多い。小泉内閣の中にいて批判ばかりされているときに、批判のパターンは3つしかないことに気がついた。

    1つは、反対のことを言えばいい。金利が下がれば、「金利が下がったら、年金生活者が困る」と言い、金利が上がれば「中小企業が困る」と言う。このやり方であれば、いつも批判することができる。

    2つ目は、永遠の真理を言えばいい。たとえば、「もっと戦略的に考えないと駄目だ」とか、「もっと目線を低くして考えないと駄目だ」といった正論を言う。戦略的に考えなくていい、という人は誰もいないので、否定しようがない。

    3番目は、相手にラベルを貼ってしまえばいい。「あいつはアメリカ原理主義者だ」とか。これはもう思考停止だ。

    どうしても人を批判しなければならないときは、この3つのパターンのどれかを使えばいい。この3つには明らかな共通点がある。それは、どうすればよいかという対案がないということだ。

    昔の民主主義は、もっと厳しいものだった。自分が何かを主張したら、「じゃあ君やってみろ」と言われるし、「あなたは死刑の執行に賛成か? 反対か?」と聞かれて、「賛成だ」と答えれば、「では、あなたが執行してください」と言われかねなかった。そうした厳しさが、民主主義の一つの原点だった。

    ところが今の日本には、人の批判だけをしていればいい、心地良い空間ができてしまった。「あのお年寄りかわいそうじゃないか。何とかしろ」と主張はするが、「では、しばらくの間、あなたがお小遣いを削って支えてください」と言われると、「いやいや、それは俺の問題ではない」と逃げることができる。

    批判に耐える力は、リーダーにとってもっとも重要だが、批判に耐えるのは本当に大変だ。

    小泉政権時代、不良債権処理のために公的資金注入を決めた翌日、新聞の論調は反対のほうが多かった。それを小泉さんに伝えたところ、「気にしなくていい。そのうちわかるから」と一言だけ言った。これこそが、腹の太さだ。しかし、普通はみな、周りにどう思われているかが気になってしまう。結局、批判に耐えて、自分が信じた事を信じる力こそが、信念だと思う。

    批判に耐えるために大事なのは、「捨てる力」だ。今の地位を失ってもいい、いつ辞めてもいい、と思えるかどうかで、批判に対する対抗力が違ってくる。大臣時代も、私はケンカする必要があれば、いつでも受けて立つ覚悟だった。私には守るものはなかったが、守るものがある人は大変だと思う。

    成功者の足を引っ張るな

    これからのリーダーは、しがらみのない、若い人から出てくるはずだ。「英雄は若者から学ばなければならない」という言葉があるが、それは正しいと思う。

    今、慶応大学で、「イノベーション&リーダーシップ」という寄付講座をやっている。そのスポンサーになってくれているのは、着メロなどを手掛けるフェイスの平澤創社長。彼は、いろいろなところから講演を依頼されるが、大人相手にやってもムダだから、講演しないと決めているそうだ。彼は、「自分が起業できたのは、若くてリスクを感じなかったから。失うものがないというのは、すばらしいこと。だから、若い人の前では講演をする」と言っていた。

    私が、若い人に1つだけ言いたいのは、「みなさんには貧しくなる自由がある」ということだ。「何もしたくないなら、何もしなくて大いに結構。その代わりに貧しくなるので、貧しさをエンジョイしたらいい。ただ1つだけ、そのときに頑張って成功した人の足を引っ張るな」と。

    以前、BS朝日のテレビ番組に出演して、堺屋太一さんや鳥越俊太郎さんと一緒に、「もっと若い人たちにリスクを取ってほしい」という話をしたら、若者から文句が出てきたので、そのときにも「君たちには貧しくなる自由がある」という話をした。

    若い人は、日本が貧しくなることにリアリティがないのかもしれない。しかし明らかに、日本中にウェイクアップコールが鳴っている。

    日本の株価は、過去5年で半分になった。リーマンショックが起きたアメリカでも、株価は5年前とほぼ同じ水準だ。世界を見回しても、日本のような状況の国はない。

    しかも、日本は貿易赤字になった。貿易赤字になったのは、地震でサプライチェーンが壊れて、原子力発電所が止まり、鉱物性燃料の輸入が増えたという理由もあるが、それだけでは説明できない。2012年8月の日本の輸出を5年前と比べると、なんと25%も減っている。対米輸出に限ってみると、36%も減っている。これは明らかに産業の空洞化が起きている。

    ハーバード大学教授のロナルド・ハイフェッツが書いた『最前線のリーダーシップ』という本の中に、「リーダーはバルコニーに駆け上がれ」という言葉が出てくる。これは要するに、「鳥の目で見ろ」ということだ。ダンスホールで踊っているときに見える光景と、バルコニーに上がって、上から見える光景は違うことがよくある。

    日本の貿易構造についても、一歩引いて俯瞰して見ることで、こうした大きな変化が起きていることに気付く。このように、鳥の目でリスク管理する力がないと、リーダーは務まらない。この「バルコニーに駆け上がれ」というハイフェッツの教訓は、リーダーにとって、ものすごく重要だ。とくに、若い人はゆとりがなくて、汲々としているだけに、このメッセージを意識した方がいい。

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  2. 安倍さんにはリーダーの素質がある

    もう1つ、リーダーは絶対にご用聞きになってはいけない。民主主義のリーダーは、みんなの意見を聞かなければならない。しかし、リーダーの役目はあくまで「こうしようではないか」と皆にビジョンを与えることにある。ただ残念ながら、ここ3年ぐらいの政治は、みんな御用聞きになってしまっている。「国民の生活が第一で、みなさんが困っていることを助けてあげますよ」と言っても、そんなこと実現できるわけがない。

    リーダーとは、「痛みを超えて、こうしようではないか」とビジョンを示して、組織に変化を持ち込める人だ。軋轢や批判に耐えて、周りを説得しながら、新しいものを生み出していくのが本当のリーダーだ。

    リーダーというのは、必ずしも天性のものではない。人はポジションによって大きく化けることがある。私は、安倍晋三さんにはリーダーの素質があると思うし、ほかに、自民党では菅義偉さんや塩崎恭久さん、民主党では前原誠司さんや古川元久さんにも期待している。

    リーダーにとっては、健康も極めて重要だ。要職に就くと、病気ができなくなる。大臣に就任したとき、病気をできない怖さを初めて味わったが、これはつらかった。たとえ39度の熱があったとしても、はってでも仕事に行かないといけない。そうでないと、お前には大臣の資格がないと言われる。

    そうすると、今までとは優先順位が変わってくる。何よりも睡眠時間をとることが重要になる。若い頃は、睡眠時間を削ってでも、論文を読む量を最大化するのが目的だった。しかし今度は、仕事を多少抑えてでも、睡眠時間を最大化するのが目的になる。このスイッチングをうまくやっていなかったら、今ごろ自分は死んでいたかもしれない。

    野球選手を見ていても、一定以上のレベルになると、ケガをしないでどれだけできるかが、いちばん重要になる。その点でも、やはりイチローはすごい。

    若い人は、生き急ぐぐらいでいい

    もう1つ大事なのは、仕事を断る勇気を持つことだ。今も、海外出張の依頼がとても多いが、「あと自分の人生は何年あるだろうか」とわざと考えて、一部は断るようにしている。

    30、40代の人にとっては、厄年というのが節目になることもある。医学の専門家の中には、厄年は何の科学的根拠もないと言う人もいるが、経験的には、厄年の時期に肉体の節目があるような気もする。

    健康という意味でも、リーダーは若いほうがいい。ある歴史家によると、日本が太平洋戦争で負けた一つの要因は、幹部クラスの年齢にあるという。戦争は24時間の戦いなので、若くないと務まらない。60代や70代になって24時間起きていたら、判断能力がなくなってしまう。だから、政治のリーダーも若くなければならない。

    若い人は、ちょっと生き急ぐぐらいでちょうどいい。「君は若いね、まだ青いね」と言われてもまったく気にせずに、30代で社長になればいい。

    日本では、努力をすれば頭角を現せるチャンスがたくさんある。だから、チャンスに貪欲になることが大事だ。人にもよるが、自分自身でチャンスの芽を摘んでいることが意外に多いように感じる。「出る杭は打たれる」ことを恐れて、ほどほどでやる人もいるだろうが、「出すぎた杭」になれば打たれない。もしやりたいことがあるなら、今の会社をさっさと辞めて、アメリカに留学すればいい。

    世界で活躍するには英語が不可欠だが、英語力を上げるにはどうすればいいのか。

    これは、いかに貪欲にチャンスを活かすかに尽きる。若い人には、海外から人が来ることがあれば、英語に自信がなくても、必ず会えと言っている。一流の人から、英会話の授業を受けられると思えばいい。そして、英語の授業を受けるときは、いちばん前に座って、いちばん最初に質問したらいい。結局、攻めの精神が大切だ。

    最近、英『エコノミスト』誌が出した『2050年の日本』の中に、2つの重要なメッセージが記されている。

    1つ目は、今後世界が、「シュンペタリアン競争の時代に入る」ということだ。言い換えれば、世界はイノベーションの競争に突入する。

    2つ目は、グローバリゼーションがどこまでも進み、英語は国際語の王座に君臨し続けるということだ。つまり、今後の世界と日本は、「イノベーション」と「英語」の戦いになる。それを自覚しておいたほうがいい。

    これからイノベーションの時代に入るということは、人の時代になるということだ。その意味で、若い人にはぜひイノベーションを起こす役割を担ってもらいたい。そういう思いを伝えるのが、私たちの世代の重要な仕事だと思っている。私は今後、日本が出遅れてしまった「英語」と「イノベーション」を強化するための、「グローバル教育」に力を入れていくつもりだ。

    明治時代を振り返ると、国づくりにおいて、富国強兵が大事だということは誰もがわかっていた。そうしないと、日本は植民地になってしまうという危機感があった。では、富国強兵の基礎とは何か。「それは教育だ」と述べたのが福沢諭吉だった。そして教育者として、その思想を実践したことが、福沢諭吉の最大の貢献だと思う。

    やはり、日本は大した国だ

    人づくりに加えて、私がやりたいのは、過去4半世紀の検証だ。再来年でバブル崩壊から25年が経つ。株価が最高値をつけたのが、1989年の12月なので、2014年で四半世紀が過ぎたことになる。

    この過去四半世紀を、私は「ロストクオーター(失われた四半世紀)」とは思わない。むしろ、「ミックストクオーター(入り交じった四半世紀)」だと思う。

    確かに失われたものはたくさんある。しかし、この25年間に、デジタルライフがすさまじく進んだ。東京は間違いなく以前よりよい都市になった。この25年間でも、よかった時代と、そうでない時代がある。そこをきちんと検証して、反省すべきところは何か、引き継ぐべきところは何か、を示したい。

    こうした検証は今まではあまりなかったが、原発事故以降、そうした概念が広がってきた。私はこれを、政治や経済の分野でやりたい。たとえば、過去25年間、政治主導はどれだけ実現できたか。今は最悪の時期だと思うが、政治主導がうまくできた時期もあった。そうした検証を、歯に衣着せず徹底してやろうと思っている。

    やはり、日本は大した国だ。日本の持っているソーシャル・キャピタルには驚くべきものがある。日本のように、当たり前のことが当たり前にできる国は珍しい。たとえば、信号がたくさん付いていて、信号が赤になったら車が止まるというのは、すごいことだ。

    しかし、優れたソーシャル・キャピタルを持つがゆえに、何か1つの新しいことをやると、このソーシャル・キャピタルが全部崩れてしまうのではないか、と主張する人がいる。郵政民営化を実施しても、TPPを結んでも、それが崩れるわけがない。日本人の知恵から生まれたソーシャル・キャピタルはそんなにやわではない。そうした蓄積を大事にしながら、日本をよい方向に変えていく。そのための道筋を示していきたいと思う。

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  3. 人間は醜いのか、醜くなるのか、醜くなれるのか?

    優しさはないのか、優しさはなくなるのか、優しさをなくすことができるのか?

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