「空洞化」論者が恐れてやまない、「現地化」こそが、国内の雇用を拡大させる有効な手段です。さらにいえば、じつはこの「現地化」こそが、日本が今必要としている雇用を調達することに成功するのです。
日本の、すり合わせ型ものづくり、高度な技術、ノウハウを生かしつつ、「新興アジア」への投資を前提に、これら強みを発揮できるゲームを構想するのです。日本の強みを生かすためにこそ、逆説的に、日本に居残っていてはいけません。「新興アジア」に飛翔すべきなのです。それが足元の大きな変化をしのいで、将来におけるものづくり大国日本の再生のためにこそ重要なのです。
この『空洞化のウソ』の主張
ReplyDelete・ 海外売上高比率が高い企業が、国内の設備投資の拡大を牽引している;
・ 海外進出をしている企業ほど、日本国内での雇用を増大させている;
・ 貿易収支と所得収支の推移をみれば、日本はすでに投資立国だ;
などなどは、すべて矛盾に満ちている。
「すでに日本は投資立国へと転換している」と言いながら、「将来におけるものづくり大国日本の再生」と言う。ものづくりをやめて投資立国にするのか、投資立国からまたものづくり大国に戻るのか。そんなことはどうでもいいのか。
矛盾でなければウソ。ウソでなければ詭弁。日本のエリートには、日本に仕事がないという現実すら見ることができないのだろうか。不正規雇用で働いている人たちの痛みは感じないのだろうか。
著者の経歴は:
1997年 東京大学経済学部経済学科卒
1998年 東京大学経済学部経営学科卒(特選論文受賞)
1998年 通商産業省入省
1998年 産業政策局調査課係長
2000年 資源エネルギー庁公益事業部公益開発課総括係長
2001年 内閣府政策統括官(総合企画調整担当)付主査
2001年 資源エネルギー庁新エネルギー対策課係長
2003年 人事院長期人事研修:ハーバード大学教養学部修士課程(修了:修士)
2005年 通商政策局アジア大洋州課課長補佐(ASEAN班長)
2006年 JETROニューデリー出向、シニアディレクター兼知的財産部長
2010年 通商政策局アジア大洋州課課長補佐(総括補佐)
2012年 タイ国家経済社会開発委員会(NESDB)政策顧問
すみません。痛みがわからないのだろうかなどと言ったほうが、間違っていました。
それにしても、経済産業省で企業のアジア進出を手伝っていたのに、現在はタイで政策顧問。自分が空洞化を実践しておいて、「空洞化のウソ」だなんて、よく言えたものだ。
松島大輔著、「空洞化のウソ」のウソ
ReplyDeleteタイで思う
http://blog.livedoor.jp/thai47/archives/52990560.html
先日紀伊国屋で、ふとこの本を見つけて、題名にひかれて買ってしまいました。
筆者によると、日本の空洞化は起こっていないとの事。
海外で日系企業が稼いだお金が日本に還流して、国内の雇用維持に繋がっているそうです。
あれっ。
国内で仕事が無い、日本で若者が正規の仕事につけないというのは嘘なんですね。
そんなにお金があれば、まさか日本で日本の会社が人件費を抑制する為に、正規ではなく派遣扱い、あるいは外国人を雇ったりするわけがない。
ましてや、海外展開をしている自動車関連の企業において。
ですよね。著者の松島大輔さん。
私の印象では、海外に出てきている自動車関連の中小企業。
先日の私のブログでも取り上げたように、大半は、日本で仕事が無くなったから出てきたのです。
日本で仕事が無いのに、日本で雇用が増えるわけが無いと思うのですが。
そして、「作れるもの」から「欲しいもの」を作る企業を目指せと。
日本で技術開発をして、他社に負けないものを作ればいいと。
そんなこと分かっています。
でも、資金もない、人材もない中小企業には大変なことなのです。
あの大企業のシャープだって、「欲しいもの」が作れれば、今のような経営状態になっていないわけで。
この本を読んで、つくづくお役人、学者先生は幸せだなぁと思いました。
暇な人は読んでみてくださいませ。
実際に中小企業の現場にいる人たちは、立腹すること請け合いです。
現在海外で働いている日本人。
日本に全員戻ったとして、仕事があると思いますか。
あるくらいなら、海外に工場を作る必要はないわけで。
たとえば。
海外に生産部門、あるいは研究開発部門を移した大手家電メーカー。
そのときに海外赴任になった日本人。
日本に、日本の会社に帰る部署はないのです。
この事実だけで、日本は空洞化しているということは明らかだと思うのです。
------------------------
『松島大輔著、「空洞化のウソ」のウソ』へのコメント
----
日本の製造業は、現在、人件費の安さ、今後伸びるであろうマーケット、法人税の優遇、インフラの整い具合や治安などを鑑みて、海外に移転をして、下請け中小がそれに続き海を渡ってきている状況ですよね。司令塔は日本にいて、現地の目付け役として駐在員または現地採用の日本人を配置する。昨今では、駐在コストを減らすため、現地採用を増やしていますが、5-10年先の計画では、現地採用邦人を減らして、タイにある工場ならタイ人、マレーシアならマレーシア人に管理職ポストを任せるべく、主にアジア人エリート学生を日本に留学させる流れが加速しています。今年から、留学生獲得目標が倍増され、日本の国立大学では、補助金や優遇ビザを用意して、各大学は必死になり優秀なアジア人学生を呼び込んでいます。
----
>つくづくお役人、学者先生は幸せだなぁ<
彼らは本当のことを知らないし、知ろうともしてないのでは?
知っていたとしても、御用学者の場合はお客様の不利になるような学説を発表しませんよね。「とりあえず数年間ごまかせればいい」みたいな本だと思います。この著者のお客ってだれなんでしょうか、気になりますね。
----
この本、ミクロの面の中のさらにミクロ面ばかり、成功事例ばかりを取り上げているだけで、外交政策や外国人の労働に対する価値観やら通貨変動リスク等に触れていませんね。
著者はエリート官僚なのにね。
----
エリート官僚は、ほんの小さな部分だけを見ているのではないかと思うのです。
全体を見ることなく、「群盲像をなでる」状態になっているように思います。
空洞化のウソ 松島大輔著 アジアと日本の今 熱く報告
ReplyDelete日本経済新聞
ライフトップ > レビュー > ブック > 記事
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO44698940Y2A800C1NNK001/
インドやタイなど「新興国」へ進出する企業こそが、実は日本の活力を取り戻す原動力となっている事実を描いた本だ。
本書が紹介するように、「海外売上高比率が高い企業が、国内の設備投資の拡大を牽引(けんいん)」しており、海外進出(直接投資)をしている企業ほど、日本国内での雇用を増大させていることは近年の調査で明らかだ。しかしマスコミの風説は、相変わらず「海外進出=空洞化」である。著者は「『空洞化』という幻聴」が、日本の引きこもりをもたらし、将来を危うくすると主張しているがまったく同感だ。原材料を輸入し、それを加工して輸出する日本……といった理解がいまだに根強いが、貿易収支と所得収支の推移をみれば、すでに日本は「投資立国」へと転換している事実を、著者はわかりやすく説明する。
評者も毎月東アジア諸国に調査に出かけるが、アジアで現地化する企業が日本にもたらす貢献の大きさに目を見張っている。成長する地域(国)に進出し、技術を移転し、人材を育成する企業の勢いはすばらしいものがある。
著者による熱い現地報告はアジアと日本の今をしっかりと伝えてくる。
日本経済新聞だけでなく、ほとんどのブック・レビューがベタ褒め。
ReplyDeleteそういえば、上記のコメント(『松島大輔著、「空洞化のウソ」のウソ』へのコメント http://blog.livedoor.jp/thai47/archives/52990560.html ) に、
☆ 空洞化は著者の頭の中身のことなのでしょう。
でもこれを日本国内で読む人の頭の中身も空洞なのでしょう。
というのがあった。いたく賛成。