Saturday, June 23, 2012

大内清

(「日本はどうして、政治の指導力が弱くても社会が安定しているのか?」という問いに) 

  • 日本では国民に教育がほぼ行き届き、優秀な官僚機構がある 
  • 主要政党間に政策や外交姿勢の違いはあっても、国を二分するほどのイデオロギー対立は存在しない 
  • 太古から続く天皇制が国民統合の象徴として根付いていることが、無意識のうちに国柄に関する国民的な合意につながっている

2 comments:

  1. エジプト人がうらやむ日本の短命政権?

    [日本人が知らない日本]

    by 大内清

    産経新聞

    http://sankei.jp.msn.com/world/news/120623/mds12062307000001-n1.htm

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  2. 「日本は、首相が次々と替わるので素晴らしい!」

     先日、エジプト最大のイスラム原理主義組織ムスリム同胞団に所属する知人と話をしていて、こんなことを言われた。一瞬、耳を疑った。

     中東で仕事をしていると、日本を賞賛する声をよく聞く。精密なテクノロジー、壊れにくくアフターケアの行き届いた自動車など、主に工業製品に関するものだ。中には、米アップル社の高機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)」は日本製だと誤解している人もいる。それだけ日本の技術力に対する信頼が高いということだろう。

     最近ではアラブ諸国でも日本アニメのファンが増えているので、サブカルチャーが話題になることもある。

     ところが、日本の政治については、揶揄されることはあっても、褒められることはまずない。日本の首相の名前を知っている人などほとんどいない。

     というわけで、最初は知人の言葉を皮肉だと思ったのだが、英国留学経験があり、政治意識も高い彼の表情は真剣そのもの。理由は「政権が短命でも、変わらずに国を運営できる能力があるという証拠だから」だと言う。

     エジプトでは昨年2月、民衆デモの高まりを受け、約30年続いたムバラク政権が崩壊した。知人の見方によると、たった1人の指導者に国家運営を依存してきたことが、最大の問題点なのだという。確かに政権崩壊後のエジプトは、経済や治安が悪化した。

     「日本はどうして、政治の指導力が弱くても社会が安定しているのか」。こう問われたので、日本では国民に教育がほぼ行き届き、優秀な官僚機構があることや、主要政党間に政策や外交姿勢の違いはあっても、国を二分するほどのイデオロギー対立は存在しないこと、さらには太古から続く天皇制が国民統合の象徴として根付いていることが、無意識のうちに国柄に関する国民的な合意につながっているのではないか-といった私見を述べた。

     うんうん、とうなずいていた知人は「エジプトも、大統領が誰であっても前進できる国にならなくちゃいけない」と力を込めた。それは日本も同じだが、褒められて悪い気はしない。

     ただ、現在のエジプトでは、指導者選びが国のあり方そのものを左右しかねない状況にある。大統領選の決選投票で争ったのは、究極的にはイスラム法による統治を志向する同胞団の傘下にある自由公正党のモルシー党首と、軍出身で世俗主義派のシャフィーク元首相だった。非難合戦は熾烈をきわめ、票数も拮抗した。事実上の一党独裁下にあったムバラク時代には考えられなかった現象だ。

     今後も大統領選挙のたびに国家観が対立するようでは、政治・社会の安定を実現するのもなかなか大変だろう。そう指摘すると、知人は「大丈夫、同胞団は誰が大統領になっても同胞団だから」。一度、政権を握ったら、二度と手放すつもりはないようだった。

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