Tuesday, October 25, 2011

中日春秋

▼四万人近いファンが葬儀に参列したカリスマの死から、もう十九年になる。若者の孤独と怒りを歌い、人気絶頂の中、二十六歳で急死した歌手尾崎豊さんを追悼する「尾崎ハウス」(東京都足立区)が、取り壊されたという記事を感慨深く読んだ
▼十代の「代弁者」といわれた尾崎さんだが、最近の若い世代には通じないらしい。ゼミで尾崎さんの歌詞を一緒に読んだ私大の教授は、失笑する学生ばかりだったことに驚いていた
▼十年近く前、精神科医の香山リカさんが学生に調査した内容を思い出す。「何を怒っているのか分からない」「ひとりよがりで不愉快」などと否定的な意見が多く、尾崎さんの歌詞に共感できるという学生は百人のうち二人だけだったという(『ぷちナショナリズム症候群』)
▼中東のリビアではカダフィ大佐の死亡が確認され、四十二年に及ぶ独裁体制は完全に消滅したが、チュニジア、エジプトと続いた民衆革命の原動力は、ツイッターなど新しいメディアを使いこなす若者だった
▼日本でも、震災ボランティアや脱原発デモの中心に若者がいた。ストレートに感情を込める歌を暑苦しく感じても、政治や社会への関心が薄れたわけではないはずだ
▼尾崎さんが叫んだ時代より、格差社会化は進み閉塞感が強まっている。それを打ち破る主役は青年以外にはない。格好のお手本は海外にある。

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