これもクルーグマンの教科書から引用しよう。
- アメリカでは1000万本のバラを栽培しているが、これに使う資源で10万台のコンピュータを生産できるとしよう。他方、南米では同じ資源で3万台のコンピュータしか生産できないとすると、アメリカでバラの生産をやめて全量を南米から輸入したら、南米のバラの生産は1000万本増えてコンピュータの生産は3万台減るが、アメリカではバラの生産がゼロになってコンピュータの生産が10万台増える。つまり世界全体では、バラの生産量は変わらないが、コンピュータの生産量は7万台増える。
各国で生産費が異なるときは、相対的にコストの安い財に特化して輸出することによって世界全体の生産量が増え、双方の国が利益を得るWin-Winが実現するのだ。これがリカード以来知られている比較優位の原理である。日本のような製造業に比較優位をもつ国が農産物に高率の関税をかけて農業を保護するのは、製造業を犠牲にして世界経済を収縮させているのだ。
このとき貿易黒字になるか赤字になるかはどうでもよい。黒字は対外債権、赤字は対外債務だが、企業が債務をもっていても返済できれば問題ないのと同じである。輸出するのは輸入の代金を払うためであり、輸出代金をためこんでもしょうがない。そのように外貨を稼ぐこと自体に意味があると錯覚するのが、アダム・スミスも批判した重商主義である。
内田樹氏の知らない比較優位
ReplyDelete池田信夫