江戸時代は、かつてないほどに、行政の手続きを、ややこしくした時代であった。人類史上、これほどまで、わざとのように、行政書類を煩雑に処理する社会もめずらしい。
それには、戦いがなくなった時代に、武士が多すぎたことも関係していた。 。。。
武士の世界は、人が余っている。
「相役である」
と、一人でできる役職を二人以上で担当させ、多くの武士を役につけた。また、
「月番である」
と、わざわざ月当番にして仕事を回した。
「そのほうが、権を専らにするものが出でぬ」
そう信じられた。 。。。
行政上のきめごとをしようとすれば、複雑なルートをたどって、あちらこちらを書類がまわり、ものすごい数の武士が判子を押すことになった。
磯田道史 穀田屋十三郎 第九回
ReplyDelete文芸春秋 2011年12月号