1988年7月23日の潜水艦「なだしお」と釣り船「第一富士丸」の衝突事故を思い出す。事故翌日付の朝日社説は題して「潜水艦側の責任を問う」。名実とも一方的な責任追及を掲げた。また、7月29日付社説でも「自衛隊側の不手際がはっきりした」と断じ、「自衛艦には、かねてから『わがもの顔』的な行動が少なくなかったという」と非難。
加えてこの時は毎日新聞の「『助けて!』の叫び黙殺 『自衛隊は乗客を見殺しにした』」(88年7月25日付夕刊)との報道が拍車をかけた。朝日も「腕組みして眺めるだけ」と追随。NHKニュースも「人命軽視」と報じ「こんな自衛隊はいらない」等々、非難の声だけを流した。
後日、この「見殺し」報道を生んだ「証言」が真っ赤な嘘と判明。事故調査にあたった海上保安庁の長官が「海上自衛隊の印象を悪くしたが、事実ではなかった」と否定した。「印象を悪くした」どころの話ではあるまい。だがマスコミはほとんど謝罪も訂正もせず、反自衛隊報道を繰り返した。
朝日は「『なだしお』航泊日誌を改ざん」(1989年11月15日付)とも報じたが、後日これまた虚報と判明。横浜地裁判決で釣り船側の過失も認定されたが、覆水盆に返らず。訴訟を通じ、潜水艦の能力を推知させる情報が漏洩した。
1971年に全日空機と自衛隊機が空中衝突した「雫石事故」も同様である。事故翌日から各紙一斉に「世界最大の無謀操縦」「反省したのか自衛隊」などと報じた。全日空側の過失を問う論調は封殺され、「100パーセント自衛隊機の過失」(71年12月14日付共同)と報ずる記事さえあった。
最高裁で全日空側の過失も認定されたが、誤報を謝罪したマスコミはない。
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