Sunday, June 26, 2011

桐生政次

拝啓残暑凌ぎ難き候に御座候にも拘らず益御健勝奉大賀候扨小生「他山の石」を発行して以来ここに八個年超民族的超国家的に全人類の康福を祈願して筆を執り孤軍奮闘又悪戦苦闘を重ねつつ今日に到候が最近に及び政府当局は本誌を国家総動員法の邪魔物として取扱い相成るべくは本誌の廃刊を希望致居候故小生は今回断然これを廃刊することに決定致候初刊以来終始かはらぬ御援助を賜はり居候御厚情を無にすることは小生の忍び能はざるところに有之候へども事情己むを得ず御寛恕を願上候時偶小生の痼疾病咽喉カタル非常に悪化し流動物すら燕下し能はざるやうに相成やがてこの世を去らねばならぬ危機に到達致候故小生は寧ろ喜んでこの超畜生道に堕落しつつある地球の表面より消え失せることを歓迎致居候も唯小生が理想したる戦後の一大軍縮を見ることなくして早くもこの世を去ることは如何にも残念至極に御座候

3 comments:

  1. 昭和十六年九月 日 他山の石発行者 桐生政次

    ReplyDelete
  2. 桐生悠々(桐生政次)
    信濃毎日新聞の主筆として書いた「都市空襲を受けるならば日本の敗北は必至である」という、『関東防空大演習を嗤う』と題した社説で知られる。

    ReplyDelete
  3. 桐生悠々『畜生道の地球』中公文庫(ISBN 4-1220-1650-9)
    井出孫六『抵抗の新聞人 桐生悠々』岩波新書(ISBN 4-0042-0123-3)
    前坂俊之『太平洋戦争と新聞』 講談社学術文庫 (ISBN 9784061598171)

    ReplyDelete