隆大はバーベキューに来ていたほかの男の人たちと違い、車もおごるお金も、女の人を喜ばせるおもしろい会話の種さえも持っていなくて、いたってシンプルだった。ただピーマンのうすい緑の皮を、そっと焦がさず焼くことができたし、ぼろぼろでも気温と用途に適した服を着ていた。アウトドアなのにヒールで来てしまった私が川原の石ころに苦戦していると、周りの目を気にせずに、さっと手を貸すこともできた。
彼の足りるか足りないか微妙な線の、肩の力が抜けたカジュアルな、あれもこれも備えた準備ばんたんよりも、かっこ良く見えた。
綿矢りさ「かわいそうだね?」
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