Monday, November 21, 2011

大平一枝

私はブランドものが全盛の時代に育ち、百円ショップやファストファッション全盛の今という時代もめいっぱい享受している。
その反面、捨てるススメは世の中に氾濫し、もはや持っていること自体が恥ずかしいくらいのムードさえ漂い始めている
なんでもかんでもシンプルがいいとは思わないが(心を潤すその人だけの贅沢な時間はあっていい)、少なくとも、もう足りないものを数えてほしがるのだけはよしておこうと思う。そんなことをしても眠れなくなるだけだし、小さな素敵を毎日かみしめながら生きるほうが気持ちも体もラクそうだ。
私は、あとひと部屋欲しいと思って越したことを後悔はしていないが、欲しい欲しい病の末に手に入れたこのかりそめの住まいを、もので埋め尽くすことだけはすまいと自分に誓っている。
春から夏にかけて節電で世の中が少し暗くなった分、キャンドルのようなほのかな明かりの心地よさや、別の効用に気づく人が増えた。「駅も町もそれほど明るくなくてもいいとわかった」「なるべく一つの部屋で過ごすようにしていたので、家族が仲良くなった。団欒が生まれた」という投書や街頭インタビューを幾度も目にした。
少し電気を落とし、少しものを減らし、欲望の対岸にあるものに目を懲らせば、隣の壁の蔦や朝日のまぶしさに似たささやかな幸せは案外すぐにみつけられるのかもしれない。

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