Sunday, July 8, 2012

倉都康行

日欧米で発覚した金融問題は、 。。。 大手金融機関に潜んでいる「甘えの構造」が徐々にあぶり出されているのだ。それは同時に、日欧米の金融当局におけるモラルハザードへの対処方法の差異を浮き彫りにするものでもある 。。。
日本のケースは 。。。 増資に絡む証券引き受け部門のインサイダー情報を営業部門が取得して、貴重な顧客に「収益源」として情報提供するものだ。これが大手3社で組織的にかつ恒常的に行われていたことが、ようやく表面化したものである。日本には未公表情報を漏らした行為に対する処罰規定もない。そんな事情をうすうす知りながら、放置・黙認していた経営者らの責任は、厳しく問われてしかるべきである。だが日本ではインサイダーに関する厳格な懲罰体制がほとんどないに等しい。課徴金も、腐った金融マインドを修正しうるような金額ではない。
その点で極めて対照的であったのが、バークレイズの会長とCEOの引責辞任であった。これはLIBORの不正操作に絡むものでインサイダー取引ではないが、「金融機関の低モラル」という意味では、似たようなものである。二人は形式的に自主的な辞任の形式を取っているが、実質的に彼らの首を取ったのは、英国の政府・中銀・金融サービス機構(FSA=日本の金融庁に相当)であった。

2 comments:

  1. 修正不能の大手金融「甘えの構造」
    日本では証券会社の不祥事、海外では“金利操作”

    倉都 康行

    http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20120705/234177/

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  2. 日本では、野村証券など大手証券3社において公募増資に絡む不正な情報漏洩問題が相次いで発覚したが、時を同じくして海外でも、やや形態は異なるものの同じように大手金融機関による不祥事が目立っている。

    5月には本コラムでも述べた米銀大手JPモルガンの巨額損失、そして7月にはロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の不正操作を巡って英大手銀行バークレイズが多額の罰金支払いを命じられた上に、会長とCEOが引責辞任するという事件が起きた。このLIBOR問題については、日米など大手20金融機関も当局調査の対象になっており、いずれ他の固有名詞が紙面を賑わすこともあるだろう。

    日欧米で発覚した金融問題は、それぞれ固有の背景を持つものであり、それがたまたま同一時期に明るみに出ただけという見方もあろうが、むしろ大手金融機関に潜んでいる「甘えの構造」が徐々にあぶり出されているのだ、という考え方も成り立つのではないか。それは同時に、日欧米の金融当局におけるモラルハザードへの対処方法の差異を浮き彫りにするものでもあり、将来の各国、各地域における金融業や金融システムの方向性に関して、一つの道標を与えるものだと読むこともできそうだ。

    日本のケースは既にメディアによって詳細に報道されているので、説明の反復は避ける。一言で言えば、増資に絡む証券引き受け部門のインサイダー情報を営業部門が取得して、貴重な顧客に「収益源」として情報提供するものだ。これが大手3社で組織的にかつ恒常的に行われていたことが、ようやく表面化したものである。「ようやく」と言ったのは、市場関係者の間では、増資情報の事前漏れは公然の秘密のように語られていたからである。

    当事者らも、それを実証することは難しいと高をくくっていたのだろう。日本には未公表情報を漏らした行為に対する処罰規定もない。そんな事情をうすうす知りながら、放置・黙認していた経営者らの責任は、厳しく問われてしかるべきである。だが日本ではインサイダーに関する厳格な懲罰体制がほとんどないに等しい。課徴金も、腐った金融マインドを修正しうるような金額ではない。

    その点で極めて対照的であったのが、バークレイズのマーカス・エイジアス会長とボブ・ダイヤモンドCEOの引責辞任であった。これはLIBORの不正操作に絡むものでインサイダー取引ではないが、「金融機関の低モラル」という意味では、似たようなものである。二人は形式的に自主的な辞任の形式を取っているが、実質的に彼らの首を取ったのは、英国の政府・中銀・金融サービス機構(FSA=日本の金融庁に相当)であった。

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