Saturday, November 5, 2011

村山斉

宇宙と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?まずはきれいな星、きれいな銀河を思い浮かべることでしょう。私たちは、このような星や銀河を宇宙だと思っていたわけです。しかし ...
星や銀河、それを形作るすべての元素のエネルギーは、宇宙全体の4.4パーセントしかありません。目に見える星や銀河は、宇宙の中のほんの一握りの部分で、残りはまったく目に見えないものだったのです。
私たちは学校で、万物は原子でできていると習いました。ですが、その原子は宇宙全体の5パーセントにもならないのです。ここで疑問となるのが、残りの約96パーセントは何なのか。実は約23パーセントは暗黒物質で、約73パーセントを占めるのが暗黒エネルギーなのです。全部足すと誤差の範囲でちゃんと100パーセントになります。暗黒物質も暗黒エネルギーも、名前はついていますがその正体はわかっていません。

3 comments:

  1. 宇宙は本当にひとつなのか
    村山 斉

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  2. 宇宙と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?まずはきれいな星、きれいな銀河を思い浮かべることでしょう。私たちは、このような星や銀河を宇宙だと思っていたわけです。しかし、2003年を境に、このような考え方がすっかりひっくり返ってしまいました。

    それは、観測の結果から宇宙全体のエネルギーの内訳が明らかになったからです。それによると星や銀河、それを形作るすべての元素のエネルギーは、宇宙全体の4.4パーセント%しかありません。目に見える星や銀河は、宇宙の中のほんの一握りの部分で、残りはまったく目に見えないものだったのです。

    私たちは学校で、万物は原子でできていると習いました。ですが、その原子は宇宙全体の5パーセント%にもならないのです。ここで疑問となるのが、残りの約96パーセント%は何なのか。実は約23パーセントは暗黒物質で、約73パーセントを占めるのが暗黒エネルギーなのです。全部足すと誤差の範囲でちゃんと100パーセントになります。暗黒物質も暗黒エネルギーも、名前はついていますがその正体はわかっていません。

    つまり、宇宙のほとんどすべてについて、私たちはよくわかっていないのです。このことがはっきりしてきたのが2003年以降のことです。私たちは宇宙についてよくわかってきたつもりだったのですが、実はほとんどわかっていなかったのです。これはコペルニクス的転回に近いもので、地球が宇宙の中心だという天動説を信じきっていたところに、実は地球は宇宙の中心ではなくて、太陽が中心だと、完全に考えが入れ替わったのと同じぐらいの衝撃があります。今まで、私たちは、原子のつくる宇宙が、宇宙のすべてだと思っていました。それが、最近になって間違いであることがわかってきたのです。

    今、宇宙研究の現場では暗黒物質をつかまえる一歩手前まできています。暗黒物質がなければ、地球も、太陽も、星も、銀河も、生まれませんでした。私たちは暗黒物質のおかげで生まれたと言ってもウソではありません。しかしその正体はまだ不明です。幸い、去年本格的に稼働し始めたLHC実験、日本の神岡鉱山の地下一キロメートルで始まるXMASS(エックスマス)実験など、ここ数年間はとても楽しみです。今後一0年間に暗黒物質の正体が少しずつ明らかになってくるのも夢ではありません。いま話題になっているのは、暗黒物質が異次元から来る使者である可能性。SFではなく、真面目に議論されている物理學の最新理論、多次元宇宙です。

    一方、暗黒エネルギーは逆で、せっかくできた宇宙の大規模構造を引き裂いてバラバラにしようとしています。この正体はもっと不明ですが、日本のすみれ計画等で徐々にはっきりしてくるでしょう。今一番の有力候補は「真空のエネルギー」です。なぜ真空がエネルギーを持つのか。これはミクロの世界を支配している量子力学の予言です。しかし、計算してみると、欲しい量の一0の一二0乗(10の120乗)倍。これでは宇宙は誕生後間もなく引き裂かれてしまい、星も銀河も生まれる時間がありません。ここで出てきた考え方は、宇宙はもっとたくさん、もしかすると一0の五00乗個もあるかもしれない、という多元宇宙です。たくさんの宇宙の中で、「たまたま」真空のエネルギーが十分小さかったものがごくわずかあり、私たちの宇宙はその一つだというのです。

    この本では、宇宙創生のカギをにぎる暗黒物質や暗黒エネルギー、そおして宇宙はいったいどのような姿をしているのかということを中心に語っていきます。この宇宙について、私たちはどんなことがわかっていて、何がわかっていないのでしょうか。最近のトピックスをおりまぜながら、宇宙とは何かをいっしょに考えていきたいと思います。

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  3. 確かに遠くの銀河で起きた超新星爆発は昔に起きた爆発です。その光が遠ざかる度合いを観測して、宇宙の膨張はどんどん速くなっていると結論づけています。ですが、遠くの銀河の方が速く遠ざかっているから、加速しているという結論を出したわけだはありません。もしかしたら説明が不十分で、うまく伝わらなかったのではないかと思いますが、実際にやっていることをもう少し詳しく説明します。

    まず、遠くの銀河で爆発した超新星を見ます。宇宙の膨張速度は計算されているので、このくらい広がったはずだということも計算できます。ですが、遠くの星を見ると、思っていたよりも暗く観測されます。

    遠くで起きた超新星が予想よりも暗いということは、宇宙の膨張が予想以上に進んでいるということです。つまり、最近になるほど、宇宙の膨張は進んでいて、過去の方は実はそんなに膨張していなかったという結論です。

    宇宙の膨張が加速しているという話は、遠くの銀河の方が速く遠ざかっているように見えるから言っているわけではありません。そうだとすれば、むしろ減速していることになるはずです。私たちが宇宙の膨張速度が加速していると言っているのは、星が爆発した後に、思ったよりも宇宙が引き伸ばされているからなのです。

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