Wednesday, November 9, 2011

伊藤真

 大学生のある時、ジャーナリストをしているアメリカ人の友人に「日本の憲法で最も大切なことは何か教えてくれ」と言われました。小学生の時から、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の3原則を覚えさせられて、この3つを書かないとテストでは×(誤り)でしたので、彼にこの3つだと答えました。
 しかし、彼は、「3つもいらない、1つだけにしてくれ」としつこく言いました。。。私は家に帰って、憲法に関する本を取り出して、いろいろと調べてみました。
 驚いたことに、どのような憲法の本にも、憲法で最も大切なものが何か書いてありました。それが、憲法13条の「個人の尊重」です。この「個人の尊重」は、「国民主権」「人権尊重」「平和主義」の3原則の根本にあります。アメリカ人の友人のきつい一言がきっかけで一生懸命に憲法を勉強するようになったのですから、彼は私が憲法を学ぶ上での“大恩人”だったと言っていいかもしれません。
 この「個人の尊重」には、「人はみな同じ」と「人は皆違う」という相反するような2つの意味があります。
 人として尊重される点では人は皆同じ、すなわち、人として生きる価値がある点で人に何ら違いはないのです。また同時に、個人として尊重される、すなわち、人は皆違うのであって、誰一人同じ人がいないからこそ、人は一人ひとりかけがえのない存在なのです。

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