Sunday, July 8, 2012

大西隆

さらに積極的に、国際社会において人類のあるべき姿を指し示し、いわば新たな国際ルールの創造者(ルールメーカー)になることを日本の役割と自覚することも必要である。一例を挙げれば、地球環境保全、すなわち、劣化し厳しさを増す地球の環境と人類とが共存していく戦略の推進である。そのための科学的基盤という国際公共財の充実強化に、日本が積極的な役割を果たすことを宣言し、国際的なプログラム-未来世代の立場に立って地球環境の今を監視する国際機関-を企画・提唱し、人類の共有物である地球での暮らし方のルールメーカーの一翼を担うことが考えられよう。

6 comments:

  1. 未だにアメリカの植民地のような日本という国家が作ったルールを守ろうなんていう国が、いったいどこにあるというのだろう。

    日本が企画・提唱して出来た国連大学が、世界にどれだけのインパクトを与えているのか。

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  2. 「共創の国」実現のために

    転換期の最前線で挑戦するものを熱く支える社会をつくろう

    国家戦略会議 フロンティア分科会

    座長 大西隆

    http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120706/hokoku1.pdf

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  3. フロンティア分科会は、38 年先の2050 年を展望して、日本の舵取りを考えるべく国家戦略会議に設置された。ちなみに、今から38 年ほど遡る1970 年代前半を振り返ると、オイルショックによって高度成長が突然終わったものの、その余韻に浸りつつ、環境問題や地方都市での豊かな暮らしのあり方に関心が向かった時代があった。経済発展も重要だが、その果実分配の公平さや環境との共生も重要という、今日共有される「持続可能な社会」と似た価値観が既に広がっていたのである。

    しかし、これまでの38 年間とこれからのそれを比較すると、いくつか大きく異なる点がある。まず、人口である。70 年代前半の日本人の平均年齢は31.5 歳と若く、また年間出生数は193 万人と、死亡数の71 万人を大きく上回っていた(1970 年)。現代では、平均年齢が45 歳と一回り以上延びると同時に、出生数は107 万人に減少し、死亡数120 万人を下回っている(2010 年)。そして2050 年になると、平均年齢が53.4 歳とさらに延びる一方で、出生数は年間56 万人と現在の半分程度に減少し、死亡数160 万人の三分の一程度になると推計される(社会保障人口問題研究所出生率・死亡率中位推計)。すなわち、70 年代前半の日本は、若者たちが人口増加の急坂を上っていた社会であったのに対し、2050 年の日本は中年を過ぎようという者たちが人口減少のこれまた急坂を下るという、まったく様変わりした社会になると予測されるのである。

    加えて、世界の地政や環境の分野においても、大きな変化が予測される。経済活動のアジアへの重心移動がさらに進展すると同時に世界の平和と安定におけるこの地域の影響力もいっそう大きくなるであろう。また、環境との共生は人類の生存をかけるほど、その重要性を増していくに違いない。さらに、日本では自然災害の脅威がますます強まり、これに対処するために危険が少ないところに暮らすという「減災」の基本がさらに浸透していくであろう。そして、こうした様々な変化を地域の人々は主体的に受け止めるようになり、地方分権が進み、参加型の意思決定が普及していくのではないか。

    総じてみれば、これらの変化は決して明るい未来を予感させるものではない。ことに高齢化と人口減少とは、生産活動を終えた多数の高齢者を少数の生産活動従事者で支えるという無理な社会構造をもたらすし、国の経済規模の縮小は、不安定さを留めるアジアのなかで、国益を守れないほどに日本の力を低下させることにつながる恐れがある。

    一方で期待できる側面があるのもたしかである。日本には、高齢社会を可能にした医療・福祉の高質な技術と仕組み、厳しい環境問題や自然災害に対処することで培われてきた省資源・省エネルギー技術の集積、また自然災害から命を護るさまざまな知恵がある。もちろん、未だ十分とはいえないものの、これらは人類共通の財産として有用であり、さらに開拓を進めることができれば、日本の存在意義を高めることは間違いない。いや、宇宙から深海まで、あるいはマクロからミクロまで、日本人がその旺盛な探究心を発揮し、未知の世界を拓くために科学技術を磨きあげる活動を遂行できれば、世界の人々にも役立つ成果をあげる可能性は少なくない。

    したがって、我われが生きる現代は、坂を転げ落ちて暗い将来を迎えるのか、それとも世界やアジアにおける日本の役割を高めつつ、人口や経済において安定した社会を実現できるかの岐路にある。社会の安定を基盤に役割を高めていくためには、様々な分野のフロンティア=最前線に立つ者が、単に課題を抱えて考えるだけではなく、課題に果敢に挑戦して、解決の道を示し、みずからその険しい道を突き進んでいかねばならないだろう。同時に、フロンティアの開拓が日本を暗い将来から救うのであるから、最前線に立つ挑戦者たちに期待し、彼らを積極的に支援する社会を創っていく必要があろう。フロンティアは、挑戦者たちにとってばかりではなく、すべての人々にとっても試練の場なのである。

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  4. フロンティア分科会は、いわば転換期のフロンティアに立とうという挑戦者たちを熱く支えるために組織された、と私は理解している。そのため、生みの親である野田総理に共感して、できるだけ若く、そして、それぞれの領域のフロンティアでまさにいま挑戦をしているメンバーに参加してもらい、自由に、伸びやかに議論を進めてもらった。

    こうして生まれたこの報告は、フロンティアに立ち、世界のなかにもっと溶け込み、日本の担うべき役割とそれに向けて進むべき道を示し、歪んだ人口構造を時間をかけて是正していく指針を示し、特に若い世代がしがらみに囚われずに活動することの重要性を提起し、さらに日本と日本人のもつ特性を自覚し、それを最大限に生かしていくことを説いている。少し具体的に、2050 年、いやそこを目指して現代の多くの人が責任を分有する2025年頃までに実現するべき社会を描いてみると以下のようになろう。

    まず、人が愛情で結びつき、子どもを儲けるという自然の営みが困難なくできる環境を整え、人口急減に歯止めをかけることである。既に逆三角形の人口ピラミッドが形成されているので、この期間に人口増加に転ずることは容易ではないが、出生率回復を実現し、人口が安定する社会を作る準備をなす時期とするべきである。男女共同参画を進めるとともに、出産、育児等に関する大胆な支援制度を発展させることが不可欠である。加えて、長寿社会を充実したものとするために、人生を複線化し、学び直し、働き直しを行うことができれば素晴らしい。

    次に、主として明治維新から第2次大戦までのアジアに対する日本人の接し方に見られた優越意識や過剰な競争心、さらにそれらが昂じた侵略的意識に対する反省を明確にして対等互恵、切磋琢磨する隣人としての関係を発展させることを基礎に、アジア地域における友好的な諸関係を形成することが肝要である。これらの関係は、国家間だけではなく、広く国民、市民といった各層で構築されるべきであろう。

    さらに積極的に、国際社会において人類のあるべき姿を指し示し、いわば新たな国際ルールの創造者(ルールメーカー)になることを日本の役割と自覚することも必要である。一例を挙げれば、地球環境保全、すなわち、劣化し厳しさを増す地球の環境と人類とが共存していく戦略の推進である。そのための科学的基盤という国際公共財の充実強化に、日本が積極的な役割を果たすことを宣言し、国際的なプログラム-未来世代の立場に立って地球環境の今を監視する国際機関-を企画・提唱し、人類の共有物である地球での暮らし方のルールメーカーの一翼を担うことが考えられよう。

    産業における革新はとりわけ大事である。必要が発明を生み、発明が産業を創るという関係を改めて認識し、人と生活に潜む満たされない必要を感じとり、創造的な精神で発明と産業化に結びつける新たな産業人の輩出に期待したい。もちろん、科学技術も革新(イノベーション)を生み出す原動力としての役割を果たすべきである。科学技術立国を標榜してきた日本にとってはとりわけこの分野での成果は重要である。宇宙や海洋の探索や資源開拓をはじめ、環境、情報通信、減災、再生可能エネルギー、生命科学等の分野で研究開発を進め、その成果を実社会に還元するための産業化を促すという目的意識を明確にすることが、新たな成長分野を生み続ける持続可能な産業発展につながるに違いない。特に、東日本大震災が、産業と生活を支えるエネルギーの供給に大きな転換をもたらしたことを強く認識し、再生可能エネルギーの供給増大と蓄電技術の開拓による供給安定化、さらに化石燃料の効率的な利用を進めて、原子力への依存度を最大限低減させたエネルギー供給体制を現実のものとする努力が加速化されなければならない。

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  5. 国内にあっては、東京への一極集中と地方の疲弊という状態のなかで人口減少が進むために、国土の多くの地域が無人化して荒れる心配がある。成長産業の集積する拠点都市を中心とした広域経済圏を各地方に構築するとともに、林業や農業などの国土管理に直結する産業の革新を進めて、競争力のある産業として再構築するべきである。加えて、国土管理の再編の過程で、自然災害の危険地域を避けて暮らす知恵を普及させることなどにより、国土の減災性を高めることが望まれる。そして、究極の課題ともいえる東京一極集中からの転換のきっかけをつくる効果的な方策を見出し、実施する必要がある。

    将来の社会を、いま語る時、巨額の借金を抱える財政の再建を避けて通ることはできない。公的資金で行うべき仕事を賄う税収が不足すれば、仕事を減らすか、負担増(増税)を合意する他ないという明解な話がこじれるのは、結局は、国民のすべてが受益者であり、負担者でもあるという公平社会が形成されていないからである。誰もが同じ機会をもち、勤労やその他の諸活動を通じて自己実現でき、願う生活を営める、さらに負担にも公平感があるという社会に近づける努力を不断に行わなければならない。また、既に蓄積されている巨大な負債をできるだけ後代に回さないようにするために、各世代における負担と受益のバランスをはかることに取り組まなければならないだろう。後代に借金を残して、未来を搾取するのではなく、育成した若い人材が存分に未来社会で活躍できるように未来への投資を行うことが現代人の責務であろう。

    2050 年に向けてこうした諸課題に取り組むことを、フロンティア分科会では、共創の国=創造的な営みのためにあらゆる能力が結集され開花する社会、の実現ととらえた。これからの日本が迎えようとしている時代は、これまでの人類社会が未体験のそれである。そのなかでいくつも課題を解決していく創造的な活動を、日本人はもとより、近隣諸国や世界の多くの仲間とともに進めていくことを強いメッセージとして呼びかけたい。

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  6. フロンティア分科会

     日本人が「希望と誇りある日本」を取り戻す上で重要なのは、中長期的に目指すべき国の将来像を示すことであり、その実現のため、切り拓いていくべき新たなフロンティアを提示することです。フロンティア分科会は、2050年までを視野に入れた我が国の将来像を描くとともに、国際的・社会的環境が大きく変化すると予想される2025年に向けた方向性を検討し、その内容を中長期ビジョンとして取りまとめていきます。
     フロンティア分科会の下に設けられた「繁栄のフロンティア」・「幸福のフロンティア」・「叡智のフロンティア」・「平和のフロンティア」の4つの部会では、個別のテーマについて検討をしています。

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